大切なものは

第 13 話


駐屯軍に新たな兵を送り、捕縛した裏切り者達を軍へ引き渡し終えたラウンズ達は皇宮へと戻り、謁見の間で皇帝へ報告を行っていた。

「ふむ、よくやった。さすが儂の騎士たちだ」

一通りの報告が終わり、跪ずいたまま皇帝の言葉を待つラウンズ達を見て、にやりと、皇帝は笑った。敵は殲滅、裏切り者は全員捕縛し、こちらの損害はゼロ。事前に裏切りを察知し対処したジュリアスがいてこその功績ではあるが、駐屯軍の戦力なしで作戦を成功したのはルキアーノ、ジノ、スザクがいたからこそでもある。

「ありがたきお言葉」

ルキアーノが代表して答えた。
血筋とラウンズとしての地位は、わずかにスリーで主のが上だが、ラウンズとしての年数と、年齢はルキアーノの方が上のため、今回の報告者はルキアーノだった。ジノとしては楽が出来て内心ラッキーだと思っているから争いになることはない。スザクとしても、ルキアーノは嫌いだが、年長者を差し置いて報告するのは正直気が咎めるし、やはり報告はめんどくさいから、自ら進んで報告をしてくれるルキアーノの邪魔をする気はなかった。

「で、ジュリアスはどうした?」
「恐れながら陛下、キングスレイは臥せっております」

普段のルキアーノなら体調不良で伏せった者を馬鹿にするぐらいの事はするのだが、今回味方が寝返っていた事にも気付けず、敵の只中に非戦闘員である軍師を置くという失態を犯してしまった。あのまま行けば後ろから刺される所だっただ事も考えれば、それを全て封じたジュリアスに対し強くは出られないのだ。
ラウンズに敗北は許されない。
だが、あのまま行けば負けもあった。

「枢木よ、ジュリアスの容態はどうなっておる」
「はっ、高熱のため現在キャメロットで療養しております。その事なのですが陛下」

たった数日とは言え、長距離の移動と指揮の疲れが出たのかジュリアスはそのまま寝込んでいる。傷の具合も良くないらしい。

「どうした?」
「ロイド伯爵より、一度精密検査を行いたいと要望がありました」
「検査をと?」
「腕の治療を行った医師がカルテの提出を拒否いたしました。そのため、現在ロイド伯爵の元には治療記録、投薬記録が一切無く、傷の状態から何かしらの薬品の使用が疑われるようですが、それを確認する事が出来ていません」

その言葉に、シャルルは眉を寄せた。
医者が拒否する理由など無いはずだ。皇帝の命を受けたものであり、ラウンズでもあるスザクが必要だと望んだ以上、情報はすべて開示されなければならない。たとえイレブン出身の騎士であってもだ。スザクが無理でも、伯爵でありラウンズのKMFを扱っているロイドが治療をおこなうと言うのだから、やはりこれも拒絶されるはずがない。だが実際には拒否された。

「ビスマルク」
「謁見前に枢木より要請があり、こちらからも提出を呼びかけましたが、同じ返答が返ってまいりました」

イレブンだから拒絶された可能性を考え、スザクは謁見の前にビスマルクに頼んでいたが、ナイトオブワンであっても拒絶されたのだ。
これは何かあると見ていいだろう。
最前線の駐屯軍の裏切りも関係しているかもしれない。
そしてこの二人の反応で、スザクは皇帝は関係していないことを悟った。

「枢木、ジュリアスのことは、お前の好きにいたせ。医者が必要なら用意させる」
「イエス、ユア・マジェスティ」

謁見が終わり、控室へ着くとすぐにスザクはセシルに連絡を入れた。もちろんルルーシュの、いや、ジュリアスの件に関して許可が出たと伝えるためだ。セシルはすぐにでも手配すると、嬉しそうな声で請け負ってくれた。
電話を切ったスザクは大きなため息を吐いた。
ジュリアスの治療は皇帝専属医師たちが行っていたから、皇帝の命令で治療を行っていたと考えていた。診察記録の拒絶も皇帝の命令なのだと。だから、他のラウンズがいる前でこの問題を提示すれば、情報提供を拒みにくいかもしれないと思ったのだが、皇帝もビスマルクも関わっていなかった。下手に疑ったから後手に回ってしまった。こんなことならもっと早くにビスマルクに相談するんだったとスザクは後悔していた。

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